箱根旅行(4)近眼のリアリティ〜ポーラ美術館「モネ、風景をみる眼 - 19世紀フランス風景画の革新」

 ラリック美術館のあと、ポーラ美術館で「モネ、風景をみる眼 - 19世紀フランス風景画の革新」展を見た。ポーラ美術館と西洋美術館が組んで、モネと他の印象派の画家を比較しながら風景をモネがどうとらえていたのか細かく見ていくというもの。光のマティエールとか工場風景の導入とか興味深いテーマについてのパネルもあり、かなり充実している。

 それで思ったのが、印象派の流行というのは都市生活者の視力が低下したこととは関係ないんだろうか…ということである。モネとかルノワールの絵というのは抽象化されていたり輪郭がぼやけていたりして最初はへんな絵だと思われていたようだが、むしろ近視の人が見た風景は印象派が描いたもやっとした絵に近いのではないだろうか。印象派が流行って一般に受け入れられていくと、その一部の絵画はだんだん「写実的すぎる」という評価がされるようになっていったらしいのだが、そういう評価が出るようになったのは印象派があまりにも当たり前になりすぎて市民のものを見る時の意識自体が自然の風景を印象派っぽくとらえるようになった(まさに「自然は芸術を模倣する」だが)というばかりではなく、都市生活のせいで一般市民の平均視力が低下していったせいもあるんじゃないだろうか…と思った。私はコンタクトを外すとほとんど何も見えないのだが、その状態で見た風景は印象派の絵画とちょっと似ている。