めんこいからと騙されてはいかん、実は相当過激な絵を描いてたんじゃないか疑惑の仙?さん〜「日本の美・発見?  仙?と禅の世界 特集展示:一休ゆかりの床菜菴コレクション」

 出光美術館で大好きな仙?さんの「日本の美・発見?  仙?と禅の世界 特集展示:一休ゆかりの床菜菴コレクション」を見てきた。

 ひょうひょうとした画風で禅の教えを描いたものがたくさん出典されていて非常に楽しい展示なのだが、よく考えて見るとかなり辛辣だったり、あるいはナメた感じの絵が多い気がしてきた。禅の哲学を一般庶民に伝える敬虔な僧侶だというから皆まじめに見てしまうが、実は仙?の画風っていうのは昨今の現代アーティストもびっくりするような過激なものだったのではなかろうかという気がしてしまう。

 なんか、まんじゅうか大福みたいな形の白いものがぽんと一個あってそれにちょっと付け足してある絵に「自画像画賛」だというキャプションがついていたりして、どうも弟子のために描いた後ろ向きの自画像らしいのだが、禅僧としての謙虚さがあらわれていますとかなんかということを言われるとははあと思っちゃうんだけど素直に考えるとおいおいふざけんなよっていう絵だと思う。

 はたまた僧侶の堕落とか禅の形骸化とかを批判するような絵もあり、画風が優しくユーモラスなのでつい騙されてしまうがよく考えると結構辛辣なことを言っていて欧米の政治諷刺漫画に近いのではと思えるようなものもあった。「南泉斬猫画賛」という絵があるのだが、これは昔の偉い坊さんが悟りのために猫を切り捨てて殺したという説話で、悟りのためには過激なことも必要だ的な文脈で引用されることがあったらしいのだが、仙?は猫を実にめんこく描いてこれに「たとえ悟りのためといっても無益な殺生をするのは慈悲が足りなくていかんね」というようなニュアンスの皮肉を書き込んでおり、ある思想を追求するあまり他の弱いものに対する思いやりがなくなるというよくありそうな現象をかなり痛烈に批判していると思った。もっと辛辣なものも何枚かあったのだが、こういう絵はただかわいいとか哲学的だというだけじゃなく諷刺反骨の精神のあらわれとして見たいと思った。

 こういう感じで、哲学的主題をおもしろおかしくかわいらしく描いた絵を堪能できるので大変おすすめである。やはり思想を広めるにはこういうわかりやすいフォーマットにするのは大事だと思うのだが、そうは言っても仙?の絵は単に一般ウケしてわかりやすいだけじゃなく微妙にナメた感じだったり辛辣だったり、見た人に意味を考えさせる内容になっているので、本当に面白い。