本と音源を組み合わせて音楽史を独習できる!〜『西洋音楽史I:バロック以前の音楽』

 ルシアン・ジェンキンズ『西洋音楽史I:バロック以前の音楽』小林英美、田中健次監修、松山響子翻訳(学研、2010)を読んだ。四巻まで日本版が出ている音楽史シリーズの最初の巻らしい。

西洋音楽史I―バロック以前の音楽 (NAXOS BOOKS DISCOVER)
ルシアン ジェンキンズ
学習研究社
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 これ、音楽史を独習するには大変便利な本である。コンパクトにまとまっていてわかりやすいのはもちろん、ナクソス・ミュージック・ライブラリーと協力し(原著はNaxos Booksから出ている)、内容を配信音源と組み合わせてあるので、要所要所で音源を聴いて楽曲の特徴をつかみながら読み進めることができる。具体的に言うと、本の最初にナクソスの専用ウェブサイトへのアクセス方法が書いてあり、それに従ってログインするとこの本に登場する順番で音源が出てきて、たとえば26ページに出てくるビンゲンのヒルデガルドの「《徳の序列》による行列」をちょっと聴きたい…と思ったら、指定されている音源第五番にアクセスすれば無料で聴くことができる。自習用としてめちゃくちゃ便利である。

 内容についても、音楽の政治的背景などをわりとすっきりまとめていて読みやすい。個人的にはビンゲンのヒルデガルドと当時の舞台芸術の関係や、『チューダーズ』に出てくるトマス・タリスと当時のイングランド宮廷なんかの話が面白かった。