センチメンタルすぎる邦題があまり内容にあっていない『僕が星になるまえに』(少しネタバレあり)

 『僕が星になるまえに』を見てきた。ベネディクト・カンバーバッチが若くして末期ガンになった青年を演じる病気映画。

 …で、表題がえらくお涙頂戴系なので期待してなかったのだが、思ったより全然よかった。主人公は死ぬ前にウェールズのバラファンドル湾に行ってみたいと思っており、友人三人がこの病人をそこまで運ぶキャンプ旅行に加わるのだが、三人とも人生がトラブり気味で旅行は前途多難…という話で、まあちょっと情感に流れているところもあるのだが(このあたり、英国映画っぽいストイックさがないんだけど監督がオーストラリアの人だから?)、そこそこユーモアもあり、むちゃくちゃつらそうなガンの痛みの克明描写もあり、最後は尊厳死をめぐるかなり厳しい話になってくる。やたらセンチメンタルな邦題とはかなり違う印象で、死に向かい合う覚悟や大切な人をなくす時の苦痛をちょっとデフォルメした設定を使いつつうまく描いた病気映画になっている。とくに、大変な苦労をして辿り着いたバラファンドルがいかにもウェールズっぽい灰色のちっちゃい湾で、風情はあるのだがあまり解放感はなく天国とか彼岸を連想させるような風景とは程遠いものだったりするあたり、結局まあ人生こんなもんよねぇ…という諦観がある気がしていかにも英国映画だなと…

 ただ、最初のほうちょっと立ち上がりにたるんだ感じがあったり、やはり細かいところでちょっと感傷的な撮り方になったりしているところもあり、そのへんはあまり好きじゃなかった。もっとユーモアを増やし、センチな描写を減らして全体を引き締めたほうがずっとよかっただろうと思う。しかしベネディクトの病気演技をはじめとした役者四人のアンサンブルが良いので、撮り方がいまいちパッとしないところでも見られる感じになっている。

 しかし、最近こういう若い男がガンになるっていう映画多くないか…?私が病気映画の傑作だと思っている『50/50』なんかもそうだし、若くて有望な男優にガン演技をさせるのが流行っているのだろうか。ちなみに『50/50』と『僕が星になるまえに』を分けるのはやっぱりユーモアの量と質で、『50/50』はセンチなところが全然なく面白おかしいのが素晴らしかったと思う。

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