ウンベルト・エーコ&ジャン=クロード・カリエール『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』

 ウンベルト・エーコ&ジャン=クロード・カリエール『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』工藤妙子訳(阪急コミュニケーションズ、2010)を読んだ。

もうすぐ絶滅するという紙の書物について
ウンベルト・エーコ ジャン=クロード・カリエール
阪急コミュニケーションズ
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 学者でベストセラー小説家のエーコと、ピーター・ブルックルイス・ブニュエルと組んで仕事をしてきた脚本家・劇作家のジャン=クロード・カリエールの対談で、どちらも愛書家であるということでひたすら本についてトークをする。全体的には、蒐集の対象であるモノとしての本と、内容、テキストとしての本両方を自由自在に行き来する内容で、本についての対談としては非常にバランスのとれたものだと思った。

 かなり深遠は話もあるのだが、一方でほとんどバカ話じゃないかと思うようなところもけっこうあり、くつろいだ対談であるということでむしろこの本はそういう愛書家のバカ話のほうに醍醐味があるのではないかと思う。とくに、エーコがベストセラー作家になったせいで著作が世界中で翻訳されまくり、文字も読めないような言語の訳書が5冊とか10冊ずつ送られてくるのでそれで書庫の一部屋がいっぱいになってしまって、しょうがないのでアルバニア語とかクロアチア語の訳書はイタリアの刑務所に寄付してしまったという話はなんかちょっとそれ問題じゃないか…?と思いつつも笑ってしまった。どこからが言語でどこまでが方言か、とか、かつてポルノグラフィが革命的だった時代(これは明示されてないが『ポルノグラフィの発明―猥褻と近代の起源、一五〇〇年から一八〇〇年へ』を参照してると思われる)、とか、ことばの歴史一般に興味がある人にとって面白いであろう議論もある。長いしいろいろな話題が含まれているが、一気に読める楽しい本である。