グレアムのいくつもの顔〜『モンティ・パイソン ある嘘つきの物語 〜グレアム・チャップマン自伝』

 新宿ピカデリーで『モンティ・パイソン ある嘘つきの物語 〜グレアム・チャップマン自伝』を見てきた。

 その名のとおりパイソンズのグレアムの自伝を映画化したものである…のだが、グレアムの伝記映画なんで一筋縄でいくわけがない。グレアムが生前に朗読していた自伝の内容にアニメをつけるというもので、エリック以外のパイソンズメンバーが吹き替えを手伝っている(パイソンズのサポートだったキャロル・クリーヴランドや、なんとキャメロン・ディアスも声で出演)。さらにそのアニメが14種類くらいの全然作風の違うクリエイティヴチームによって作られたものをつないでいるという構成で、話も全然直線的ではないしタイトルどおりどう見てもウソや冗談だろっていうのも入っているし、ずいぶんと野心的な作りである。またまた内容もパイソンズのスケッチに言及するものが多く、モンティ・パイソンのテレビシリーズや映画を見てないとわかりにくいと思われる。アニメのほうもテリー・ギリアムリスペクトみたいなシュールな作風が多く、サイケデリックだったりやたら手ぶれ感があったり、好みが分かれそうだ。

 しかしながら、これはこれでグレアム、ひいてはパイソンズのものすごく多様な顔を示すものとして成功してるんじゃないかなぁと思った。登場するいろいろなアニメでグレアムはイートン校のおぼっちゃんだったり、エリザベス王太后と楽しくお話する礼儀正しい学生だったり、無茶苦茶反逆的な芸人だったり、パートナーを心から愛するロマンティックなゲイだったり、アル中のプレイボーイだったり、とにかくいろいろ矛盾しているのだが、まあエピソードは虚実とりまぜているとしても、たぶんグレアムというのはこういういろんな矛盾した部分があわさった人だったのではないかと見ているうちに思うようになる。それに、有名人の伝記ものだからといって安全策に走らず、いろんなクリエイターにチャンスを与えて面白いものを作ろうという心意気もなかなかいいんじゃないかと思う。