男の子版『ジョージアの日記』かな?〜『サブマリン』

 新宿シネマカリテでDVD限定レイトショーの『サブマリン』を見てきた。『ハイっ、こちらIT課!』のモスことリチャード・アヨアーデの初監督作。製作にベン・スティラーが関わっており、さらに音楽はアークティック・モンキーズのアレックス・ターナーという豪華なスタッフ。

 80年代末くらいを舞台に、ウェールズスウォンジーに住んでいる15歳の少年オリヴァーの暮らしを追ったオフビートなコメディである。オリヴァーがなんかけっこうサイコな感じの子なのだが、そのサイコ味がかなりリアルで、憧れてる彼女の心を得るためイジメに加担したり、彼女の犬を殺そうとしたり、なんかちょっとヘンだが完全に暴力的とまでは言えないような十代の子が考えそうなよろしくない行為が自然かつブラックユーモアを持って描かれているあたりが面白いと思った(とはいえ最初にいじめの標的にされたゾーイが救われないのはかわいそうすぎる)。あとガールフレンドのジョーダナがちょっとたまに不自然だと思うのだが(赤いコートを着ていて犬が好きで手ががさがさで彼氏のすね毛を燃やしたりする女、ってまるで私のようだが、ああいうエキセントリック女子ってそもそもそんなにたくさん友達もいないので自分からはあまりイジメに加担しないように思う)、まあ15くらいのガキ男子から見るとああ見える女の子もいるのかなぁと。

 一番良いのは美術で、80年代末〜90年くらいの雰囲気を非常に自然に、かつ現代と直接つながる時期として見せるインテリアや衣装はとても見ていて楽しかった。ウェールズのそんなにキレイじゃないし寒々しいがなぜかなんとなく親しみを持てる風景の撮り方も良い。あと役者陣が充実しており、息子がニンジャの話をしたら「人種差別はいけません!」とたしなめる、とてもいい人だがちょっとズレてるお母さん役のサリー・ホーキンズとかとても良かったと思う(とてもいい人だがちょっとズレてるせいで怪しい自己啓発系の仕事をしてるむちゃくちゃうさんくさい元カレにモーションをかけられ不倫の瀬戸際に陥るので、いい人もたいがいにしたほうがいいと思った)。主演の子役であるクレイグ・ロバーツは演技もできてこれから楽しみだと思うが、あまりにもマーティン・フリーマンに激似で、もし『シャーロック』や『ホビット』で回想場面が出てきたらマーティンの少年時代として出てきて欲しいレベル。

 
 全体的に『ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日』に似てると思った…のだが、『ジョージアの日記』のほうがもうちょっと明るい雰囲気だったかな。