絶対、日本ではウケないだろうが…〜『アラン・パートリッジ:アルファ・パパ』

 『アラン・パートリッジ:アルファ・パパ』を見た。日本ではまず公開されないと思うのだが、面白かった。

 アラン・パートリッジスティーヴ・クーガンが作ったキャラクターの中では最も有名なキャラで、90年代からこのかたクーガンが演じ続けているキャラらしいのだが日本では全く無名(日本には輸入されてないと思う)で、私もイギリスに行くまで名前も知らなかったしテレビで直接見たことはほとんどなかった…のだが、これ以前のテレビ番組を見たことがなくてもたいてい映画だけでわかると思う。アランを主人公にした本格的な映画はこれが始めてらしい。

 アランはスティーヴ・クーガンが最も得意とするタイプの役柄で…というのはつまりすげー嫌なヤツである。ノリッジのラジオのDJ(BBCにつとめていたこともあるがクビになったらしい)なのだがその職に不似合いなくらい、所謂日本語でいうところの「コミュニケーション能力」が欠けており(あんだけTPOにあわないことばかり言っててラジオのDJができるって、逆の意味で勇気を与えてくれる役柄かもな)、各種差別発言等不適切なことばっかり言っているわりには自分の保身ばかり考えている。実にイヤなヤツだが、英国人に受けそうなブラックユーモアたっぷりのキャラでもある。ご当地のノリッジでは大人気で、この映画のプレミアをノリッジに誘致するキャンペーンも大々的に行われたとか。

 この映画版の主なストーリーはノリッジのラジオ局占拠を中心にしている。アランがつとめているノース・ノーフォークデジタルラジオ局がもっと大きいネットワークに買われるのだが、そこでリストラ案が浮上していることがわかる。アランは同僚のパットから、ボスたちの会議にのりこんでリストラをやめるよう意見してくれ…と頼まれてそのとおりにしようとするのだが、会議の途中で自分かパットかどちらかを切るという案が出ているのを知って「パットはアイリッシュで口が悪い!」みたいな差別発言的出まかせをはいてまんまとパットをクビにし自分を守ることに成功。ところがクビにキレたパットは銃を持ってラジオ曲を占拠。焦るアランだが、アランが自分のクビの原因であることを知らないパットはアランを交渉役に選び、占拠をしながらアランとラジオ放送を続ける。目立つ役が回ってきて嬉しいアラン…だが、なんといってもパットを含めたラジオ局の人たちもノリッジ警察もリスナーであるノリッジの人たちものどかなもんで、ラジオ局占拠は史上稀に見るグダグダなものになり… 

 全編、ブラックユーモア満載で笑えるところはたくさんあるのだが、ローカルネタが多くて私もわからないところが結構あった(たぶん年代も関係していると思う)。若干のアクションもあるのだが、まあ普段全然運動とかしてなさそうなアランが走ったり飛んだり、その無様さがおかしいのでアクションコメディというべきなんだろうと思う。途中、アランがトイレに落ちるところは『トレインスポッティング』のオマージュなのかねぇ…しかしこの手のコメディは絶対に日本では受けないと思う(たぶんUKでもけっこう観客を選ぶタイプのものなのではと思う)。

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