テートの大作が勢揃い!森アーツセンターギャラリー「ラファエル前派展」

 森アーツセンターギャラリーで「テート美術館の至宝 ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢」を見てきた。

 これ、元の展覧会をロンドンで見てるのだが、かなり印象が違う。とりあえず今回の巡回展では、テートがバーミンガム美術館から借りてきて出してた大作は軒並み来日してないし(フォード・マドックス・ブラウンのThe Last of Englandとか)、アメリカから借りてきてたホルマン・ハント版の「シャロット姫」とかも来てない(こういうロンドンであまり見られないものがテートの展示のハイライトだった)。

 しかしながらそれでもテートのラファエル前派は質・量ともにバーミンガムと並んで世界一なので、この来日展を見るだけでもラファエル前派の有名作はほとんどカバーできる(これ以外にラファエル前派の大作絵画で来てないのは上にあげた二枚とウォーターハウスの「シャロット姫」とミレイの「盲目の乙女」あたりかな?)。なんてったってジャン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」が来てるし(これは十年ほど前に文化村に来日したことがあるしロンドンでも何度も見たが、見るたびに気味悪い怪しい絵だ)、ホルマン・ハントの「良心の目覚め」とか、有名作揃い。それぞれの部屋に特集テーマがあって詳しいパネル解説もついているが、とくに最後のテーマが曖昧になり唯美主義的になってからのコーナーには美女の殿堂があり、ロセッティの「プロセルピナ」や「ベアタ・ベアトリクス」「最愛の人(花嫁)」など有名作ぞろい。この部屋にある数枚の絵が、英国人の美人の基準を根本から変えてしまったと言っても過言ではない。画家やモデル、関係者についてのパネル解説もけっこう充実しているのだが、モデルの大部分はワーキングクラス出身だったそうで、たぶんこの当時の芸術家たちはあまり貴族的ではなく、飼い慣らされていないワイルドで活動的・現代的な美を求めてたんだろうなという気がする(ひどい言い方だが、今でもけっこうUKでは貴族階級とワーキングクラスで容姿の雰囲気が違ったりする)。

 とくに面白かったのはシメオン・ソロモンというユダヤ系のゲイの画家の絵にかなり焦点をあてていたところ。ゲイやレズビアンをにおわせる絵で有名らしいのだが、全然知らなかった。ちなみにこの絵がきてたのだが、私も一緒にきていた連れ合いも、何も根拠なく左端の若者はオネエ、右側の女子たちはビアンだと思った…

 三菱一号館でやってる「ザ・ビューティフル」も絶対行くつもりなのだが、こちらには何が来てるんだろう?ひょっとしてヒルズに来てなかった大作はたいていこっちに来てる?

 ↓ちなみに、ラファエル前派と美女の概念の変遷については以前こういうエントリを書いたことがあるのだが、やっぱりラファエル前派の日本への影響は大きいなぁ…と思った。誰かこれについてモノグラフ書いてほしい。
漱石がイギリスでラファエル前派にハマって帰ってきてから100年がたちました〜森ガールはラファエル前派的人工自然か?