なんだよ、ラッセル車出ないのかよ!〜『スノーピアサー』(北から目線のネタバレあり)

 『スノーピアサー』を見てきた。

 温暖化を食い止めるために人間が散布した冷却物質で凍ってしまった地球が舞台のSF。唯一、鉄道王ウィルフォードが作った全天候対応型自給自足鉄道は走り続けており、その中に17年前に避難した人々は助かった…のだが、現在の列車内には先頭車両から後部車両に向けて強固な階級社会が存在しており、後部車両の下層階級の人々がプロテインを食べて汚い環境でしのぐ一方、先頭車両の人々はしゃれた服を着て安楽に暮らしていた。そうした中、後部車両に住むカーティスは扉を突破して先頭に行く革命計画を立てるが…というお話。


 設定は面白いしヴィジュアル的にも見所はいっぱいあるしテーマは非常に現実的なものだと思うのだが、なんかかなりツッコミどころが多く(いやこれは私が雪国育ちだからなのかもしれんが)、しかも最近こういう映画いっぱいあるよな…というところでちょっと独創性が足りないような気がした。つまらなくはないのだが、とくにすっごく面白いというわけでもない気が…


 まず、この列車が豪雪・低温の中17年も止まらないでちゃんと走っている仕組みは何なのかとか、雪掻車みたいなやつもないのにどうやって自前で除雪して走ってるのかとか、最初腕が凍るくらいの外気温だったのになんで最後ああなるのとか、橋を通過する際あんな危険なことをしていて外壁にも傷ができるだろうに外に出てメンテナンスする技術はないのかとか、線路のメンテどうしてるんだとか、車両の屋根の雪はどうするんだろうとか、途中のカーブで窓を通して銃撃しあう場面で窓に穴があくんだけどあそこで先頭側と後部側の穴(及び穴から入り込んでくる冷気)の対処が全然違うのは大丈夫なのかとか、雪国育ち的にあまりにも曖昧な設定が多くて、いちいちツッコミを入れてしまったというところがある。なんていうか、「寒いって怖いよな!」っていう単純な発想だけで細部つめてないのでは…という不安がむんむん。「怖いよな!」で終わる=実はナメてる、ってことですからね。個人的にはあの世界観でレトロな除雪用ラッセル車みたいなやつ出したらすごくカッコよかったと思うんだけど…(←これは完全なイチャモンだからどうでもいいんだが)。あと、雪国育ちじゃなくてもこれは思う人いたと思うんだが、あの食べ物に入ってるメッセージ類、どうしてカーティスは疑わないんだ?普通、出所を疑うよね?

 あと女性の描写なんだが、ティルダ・スウィントンはなんでいっつもああいう役なの?以前『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』を珍しく地元出身の友人と見に行った時、雪国育ちの二人とも激おこで映画館から出てきたという経験があるのだが、ティルダ・スウィントンを冷たい雪の女王キャラで出してくるのってちょっともう怠惰なんじゃないかっていう気がする。それに、ああいう「冷たい管理者としての女」って、古くは『カッコーの巣の上で』、最近だと『エリジウム』とかにもあるんだけど、なんかかなりミソジニー的な表現だよね。まあ、『スノーピアサー』に比べると『エリジウム』のほうがまだニュアンスに富んだ表現だった気がするが…それからヤク中であんまり何もしないのに千里眼で(ただし千里眼能力は途中であんまりプロット上うまく生かされなくなってると思う)聖母で処女であるユナはちょっと見ていて辟易しましたわ…

 まあ、全体的にいろいろどこかで見たことがあるような表現(これは『マトリックス レボリューションズ』だなぁ…とか、『トゥルーマン・ショー』だなぁ…とか、『エリジウム』だなぁ…とか)が多くて、あんまりそれがうまく生かされているようにも思えなかったので、そのへんもそこまで乗れなかった一因かもしれない。