『ニューヨーク 冬物語』を見た。
これ、実はかの有名なマーク・ヘルプリンの小説『ウィンターズ・テイル』の映画化である。
原作はマジックリアリズムの手法で書かれたファンタジーでかなりスケールが大きく、高校生くらいの頃に読んですごく面白かった覚えがあるのだが、映画のほうははっきり言ってイマイチ…サイテー!とか金返せ!っていうわけではないのだが、原作に比べるとかなりスケールダウンしているので拍子抜けという感じである。
一応、話は19世紀末、神話的に改変されたニューヨークで始まる。ピーター(コリン・ファレル)は不思議な馬の導きでベヴァリー(『ダウントン・アビー』のシビルことジェシカ・ブラウン・フィンドレー)と出会い、激しく愛し合うようになるが、努力もむなしくベヴァリーは肺病で死亡。失意のうちに敵であるソームズ(ラッセル・クロウ)にボコボコにされ川に投げ込まれたピーターは間一髪で助かるが記憶を失って2014まで生き続ける。ピーターはふとしたきっかけで記憶を取り戻し、悪魔ソームズとの決戦に挑むが…
とりあえず映画化が難しいからスケールを小さくしたというのはわかるし、頑張ったとは思うのだが、とりあえずいろいろ変更の方向性がおかしいと思う。設定を現在(2014年)にしているのだが、そのせいでウィラの年齢がおかしくなったりいろいろ問題が出てきているし、やたらにキリスト教チックになってマジックリアリズム風味が薄くなっているのもよくない。悪魔の頭目ルシファー役でちょろっと出てくるウィル・スミスと、普段は怖いけどルシファーの前では小さくなってるラッセル・クロウとか、ピーターの父の役で一瞬だけマット・ボマーが出てくるとか、またまたばあちゃんになっても美しいエヴァ・マリー・セイントも出演しているとか、役者は皆すごい頑張っているので見られるものになっているのだが、いかんせん話がただの恋愛もので…これ、原作のファンは激怒なんじゃないかな?アメリカでも評判が悪いらしいが…ちなみに作者のヘルプリンはかなりヘンな人らしいのだが、映画には怒ってないんだろうか。しかしさぁ、これ、ひょっとしてピーター・ジャクソンかギレルモ・デル・トロに撮らせたらもっと断然おもしろくなったのかなぁ…とか思うとちょっと空しい気持ちになってきた(いやまあ、ジャクソンは恋愛が苦手だからデル・トロかな)。