演技はいいが、話は…『美しい絵の崩壊』

 新宿武蔵野館で『美しい絵の崩壊』を見てきた。

 原作はドリス・レッシングの短編集『グランド・マザーズ』に入っている、表題作。

グランド・マザーズ (集英社文庫)
ドリス・レッシング
集英社
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 あらすじとしては、オーストラリアの海辺で育った親友同士であるリル(ナオミ・ワッツ)とロズ(ロビン・ライト)が協力して息子のイアン(リルの息子、ゼイヴィア・サミュエル)とトム(ロズの息子、ジェイムズ・フレッシュヴィル)を育てるが、リルはトムと、ロズはイアンとデキてしまい、2人の息子が結婚した後もずるずると…というような話である。

 とりあえずキャストの演技は非常に良い。とくにナオミ・ワッツロビン・ライトの、それぞれ個性的な中年女性の美は非常に良かった。またまたオーストラリアの海の輝きをとらえた映像も綺麗である。

 しかしながら話のほうは、不必要に真面目に撮ってるメロドラマみたいな感じでイマイチ…まあ、私はこの手のネタは思い切って艶笑ドタバタコメディにしてしまったほうがよいんじゃないかというくらい好みが偏っているのであまりの真面目さに飽きてきてしまったのだが、まあそれは好き好きの問題なんでしょうがない。もう一つピンとこなかったのは、なんかちょっとホモフォビア的な感じがしたというところである。これはたぶん深読みだと思うのだが、ロビン・ライトは髪を短く切り、見た目もトムボーイが母親になってみたいですごくかっこよくブッチィなのだが、一方でナオミ・ワッツは風にそよぐブロンドの美女ですごくフェミニン、まあフェムっぽい。それでこの2人は熱い友情で結ばれており、周りの人々からレズビアンだと疑われているのだが、お互いくっつくんじゃなくなぜか相手の息子とくっつくのである。このあたりにどうもホモフォビア的なものを感じてしまった…別にこの2人がくっついておしまいでいいんじゃないかと…いや、それだと話にならないのかもしれないが。いずれにせよ、私はこういう「女同士の友情がなんだか不健全な方向に!」みたいな話はあんまり好きではないのだろうと思う。