字幕がかなり悪い〜『ジゴロ・イン・ニューヨーク』

 ジョン・タトゥーロの監督作『ジゴロ・イン・ニューヨーク』を見てきた。

 稀覯書店をたたむことになったマレィ(ウディ・アレン)とフィオラヴァンテ(タトゥーロ)は当座しのぎに男娼ビジネスをはじめる。美男というわけではないが気配りができて女性にモテるフィオラヴァンテの個性で商売は予想外の繁盛を見せるが、ハシディズムのラビの寡婦で家にこもって子育てをしている美女アヴィガル(ヴァネッサ・パラディ)とフィオラヴァンテが知り合ったことからいろいろなトラブルが…という話。

 お話じたいはちょっとビターなロマンティックコメディという感じで、フツーという感じか…ニューヨークを舞台に宗教を題材にした恋愛喜劇で、役者が監督…ということでは『僕たちのアナ・バナナ』にかなり似ていると思うのだが、『ジゴロ・イン・ニューヨーク』のほうが恋愛コメディとしてはかなりベタだし、レズビアンやハシディズムの描き方もちょっと雑な気がした。レズビアンの描き方については、ああいう「退屈したゴージャスなフェム二人が遊びで男と3P」とか、なんかかなりリアリティない設定な気がした。ハシディズムのコミュニティの描写はまあニューヨークにそんな地区があることすら知らなかったのでとても興味深かったんだけど、カルチャーギャップコメディとしてはもうちょっと丁寧に描いてもいいんじゃないのかな?

 しかしながらこの映画、内容よりも字幕にかなり問題があったと思う。英語の台詞ではLesbianという単語を使用しないでgirlfriendとか言ってるのに二箇所も「レズ」という日本語を使用しており、現代日本語では「レズ」というのは失礼な言い方なので(「ビアン」はたぶんOK、「レズビアン」はちょっと長いがこれのほうが映画字幕ならいいのでは)、非常によろしくない。あと、台詞ではけっこうぼかして曖昧に言っているところを露骨にしている箇所がいくつかある。とくに初めてフィオラヴァンテがパーカー(シャロン・ストーン)のところに売春に行くところで、二人ともわざとかなり婉曲に「初めてなんです」「ああ、つまりこの手のことですね?」みたいな控えめな会話をしているのに、字幕は「買春が初めてで?」みたいなあからさまな言い方になっているのは、なかなかこの二人の微妙な空気が伝わらなくて字幕としてはダメなんじゃないかと思った。