これは図書館泣かせだ〜NATROM『「ニセ医学」に騙されないために−危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』

 NATROM『「ニセ医学」に騙されないために−危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(メタモル出版、2014)を読んだ。著者ははてなダイアリーでは有名人であるNATROMさんである。

 実はこの本、「特殊な著者標目の例」として来学期の検索実習でとりあげようと思って本務校と非常勤先に推薦した。案の定、既にCiNii Booksには登録されているのだが、著者検索ではNATROMで検索してもナトロムで検索しても出てこない状態になっており、著者名が特殊だという点で相当、図書館泣かせな本なのではという気がしている。東大OPAC武蔵大学OPACではNATROMで検索すると出てくるので、CiNii Booksの検索に何か問題があるようである。まあ、CiNii Booksの著者検索は昔からいろいろ動作がおかしいので、自分で探す時も学生に探し方を教える時もひと苦労である。

 すでにいろいろな書評が出ている話題の本であるので、全く専門外の私が解説することは何もないだろうと思うのだが、内容は日本でよく見かけるようなニセ医学をたくさんとりあげ、医師としての自分の体験とリサーチをまじえつつ簡潔に解説するというもので、非常にわかりやすい。深くハマっている人には通じないだろうが、なんとなくはやりだから健康グッズとかを使用している、という人(こういう人はけっこうたくさんいる)にはこれくらいなら通じるのではないかと思うので、身の回りにいるそういう人には積極的におすすめしたいと思った。

 ちなみにこの本に出てくるあやしい学説とか健康法には歴史を勉強している者には昔なつかしい(?)ものが多く、千島学説が「ゾウリムシが自然発生する」などと説いている、という箇所(pp. 129-30)は、例の有名なネズミ自然発生実験(これ、私は最初に高校化学で習って、大学に入ってからも錬金術かなんかの話のからみで習ったぞ)を思い起こさせるところがあって、思わず「17世紀か!」とツッコんでしまう。またまた、「血液中に存在している小さな生命体ソチマット」の学説(!)の話は、スター・ウォーズのミディ=クロリアンなんかを思わせるところがあって無駄にワクワクするね!いや、本当に無駄にワクワクするだけだが…