オズワルドのお兄さんが実に気の毒〜『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』

 『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』を見てきた。

 ケネディ暗殺に巻き込まれた市民たちの姿を切り取ったセミドキュメンタリーふうな映画である。中心になるのは大統領とその暗殺容疑者リー・ハーヴェイ・オズワルド両方を手当することになったパークランド病院のスタッフたち、暗殺を防げなかったシークレットサーヴィスやFBI、暗殺の瞬間をたまたま撮影してしまったエイブラハム・ザプルーダー、リー・ハーヴェイ・オズワルドの兄であるロバート。かなりたくさん人が出てきて、さらにどの役もかなり実力のある俳優が演じている。

 全体的にはあまりエモーショナルにならず、淡々と出来事を描く映画で、変な陰謀論などにも肩入れしていなくて悪くないと思ったのだが、盛り上がりが少なく最後のほうたるんできた気がする。かなりエピソードから他のエピソードへの切り替えを速くして観客を飽きさせないようにしていると思うのだが、それでもちょっと途中からきつくなってくるところがある。

 一番いいと思ったのはオズワルドの兄ロバートのエピソードである。ロバートはかなりの常識人で、もちろん弟が暗殺を企てていたなんていうことは全く知らず、報道で初めて知って驚愕する。さらにこのオズワルド兄弟の母であるマーゲリートは完全にイカれた人で面倒を増やすだけ、リーの妻はソ連出身だそうで英語もあやしく、逮捕され(やがて暗殺され)た弟のための善後策は全部ロバートの仕事になってしまう。この実に気の毒な人をジェイムズ・バッジ・デイルが抑えた演技で表現している。

 この他、パークランド病院の若い医師キャリコ先生をザック・エフロンが演じていて、いかにも若くてあたふたしている感じがよく出ていたし、看護婦長役のマーシア・ゲイ・ハーデンなんかも地味だがいい役だ。ザプルーダー役のポール・ジアマッティは、出てきていきなり趣味の悪いエスニックジョークを言って「それもう聞きました」とか従業員に言われるというひどい登場なのに、だんだん演技に引き込まれてしまうあたり、さすがである。個人的にはシークレットサーヴィスのソレルズ役で出てきたビリー・ボブ・ソーントンがあまりにも老けた感じに作ってきていてびっくりした。