イングランド「一緒に来てくれる?」〜『サンシャイン 歌声が響く街』(ネタバレ)

 『サンシャイン 歌声が響く街』を見てきた。スコットランドのバンド、プロクレイマーズの歌を用いたジュークボックス・ミュージカルである。


 ↑これなんかちょっと日本語版の宣伝がおかしくて、「スコットランドの田舎町リース」って言ってるがリースエディンバラの郊外で田舎じゃないと思うし(あそこが田舎扱いだったらハイランドは魔境かよ)、あと見せ場はだいたいエディンバラのナショナルギャラリー前とかかなり人が多いところで展開する。

 話は割合単純だが、けっこう深刻なところもある内容である。スコットランドじゃなくいきなりアフガニスタンで英国軍(主要登場人物であるアリーとデイヴィが従軍している)が地雷でやられるところから始まり、その後も不倫やら失恋やら就職やら、日常生活で大人が直面するいろいろなトラブルをきめ細かく描いている。こういうふうにジュークボックス・ミュージカルにしてはかなり話がきちんとしており、「歌のために話を作ってる」感がないところが特徴と言えると思う。華やかなプロポーズを断ってアメリカで働こうとする娘とそれを見送る病気の父親とか、長年連れ添った夫に隠し子がいたことを知って衝撃を受けるが結局は受け入れる他ない妻とか、一世一代のプロポーズを断られて居場所がないため危険な軍務に戻る若者とか、なんか設定にやたらリアリティがある。結局アリーがちゃんとロニーと話さないところや、ジーンに恋心を抱いていた美術館の上司の話が解決されないところや、ジーンとロブがなあなあで仲直りしてしまうところなどはちょっと話の展開にスムーズさが欠ける気がするのだが、ハッピー一辺倒の『マンマ・ミーア!』とかともひと味違って独特の味わいがあり、かなり完成度の高いジュークボックス・ミュージカルと言えると思う。

 それで、最後一箇所だけものすごく気になったところがある。この映画の一番の見せ場はナショナルギャラリー前の'I'm Gonna Be (500 Miles)'のフラッシュモブダンスなのだが、ここはスコットランド男デイヴィがジャマイカイングランド人の彼女イヴォンヌに「帰国する時はイングランドに一緒に来てくれる?」というようなことを言う場面なのである。それまではずっと逡巡していたデイヴィは「いつも一緒だよ!」みたいな返事をして二人が結ばれるのだが、これ、スコットランド独立の国民投票を考えるとかなりびっくりするようなオチだった。全体的にこの映画は非常にスコットランド独自の文化を称えるような作りになっていて、歌を提供したプロクレイマーズも脚本家のスティーヴン・グリーンホーンも独立派である。でも最後の場面はどっちかというと「独立よりはイングランドとの融和を」みたいな方向性に見えたんだが、ここはどうやって解釈すればいいんだろう。