ヴィジュアルは美しいが、話はイマイチ〜『ぼくを探しに』

 『ぼくを探しに』を見た。

 アニメーションで有名なシルヴァン・ショメの初めての実写映画らしい。口のきけない孤児のピアニスト、ポールが両親の死までの記憶を取り戻すまでを描いた作品で、コメディとファンタジーを合わせたような作風である。

 アパートの中に畑があるマダム・プルースト(もちろん『失われた時を求めて』にひっかけてる)の部屋とか、ヴィジュアル的にはいろいろ凝っていているし、小道具の使い方なんかも気が利いているのだが、私はイマイチ面白いと思わなかった…例えば途中で出てくるホームレスの男は、最後になんだったのかわかるようになっているのだが、それでもけっこう投げっぱなしでちゃんと回収されてないと思った。あと、基本的にドリームヴィジョン(ポールがマダム・プルーストにもらったお茶とマドレーヌで気を失っている間に過去の夢を見る)で話がすすむのだが、この夢の中の展開がちょっとかなりぬるくて、語り口も洗練されてないと思った。もうちょっと話全体のテンポをあげて整合性にも気を配ったほうがいいんじゃないかと思ったな…