完全なるドタバタ〜グローブ座『間違いの喜劇』

 グローブ座で『間違いの喜劇』を見てきた。いつものグローブらしく、ルネサンス風の舞台と衣装を使った上演だが、とにかくドタバタ喜劇としての側面に焦点をあてている。

 もともとこのお芝居はシェイクスピアの他の作品に比べて詩情溢れる台詞があるわけではなく、かなり単純な話で差別ネタや暴力も盛り込まれているので粗野なところがある。演出のブランチ・マッキンタイアはそのへんをよく心得ているようで、徹底的に視覚的なギャグで笑わせる方向の演出をしており、それはけっこう成功していると思う。とくにドローミオ兄弟はかなり体を張ったギャグをしてくれており、大変可笑しい。芝居の開始前から、ドローミオが高いところにある洗濯物をうまく取り込めなくて困惑するギャグがあり、それが途中で生きてくるなどといった細かい笑いが全編にちりばめられている。港町で魚を投げ合うドタバタな喧嘩や、神出鬼没(?!)のドローミオとアンティフォラスを捕らえようと右往左往するエフェソスの街の人々の狼狽ぶりなど、大変笑える。一方でエイドリアーナとルチアーナの姉妹が、恋敵になるはずの高級娼婦とちゃんと協力してアンティフォラスをとらえようとするあたり、性差別的・暴力的な色合いが濃いこの芝居のミソジニーを薄めて愉しい話にしようという努力もしているようだ。もともとあんまり好きではない芝居なのだが、苦心して気持ちよく笑える話にまとめているあたりはとても良いと思った。

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