野心作だし演技も良いが、脚本に問題あり〜『プロミスト・ランド』(ネタバレあり)

 ガス・ヴァン・サント監督の新作『プロミスト・ランド』を見てきた。

 シェールガスが出るアメリカの田舎町マッキンリーに、グローバル社の社員スティーヴ(マット・デイモン)とスー(フランシス・マクドーマンド)がやってきて町ごと土地を買収しようとするが、地元の科学教師の反対を受けたり、環境保護団体のスタッフが乗り込んできたり、いろいろ問題が発生して…というのが話の内容である。

 シェールガスの会社から抗議を受けるなど様々な苦労をして作った映画だそうだが、フラッキング全てを攻撃しているような映画ではないと思うし、スティーヴ自身が貧しい田舎町出身で、自分の経験に基づいてかなり町の人のことを考えて説得活動をしているというあたり、テーマの扱いも繊細なので、これは抗議をした会社のほうが過剰反応だと思う。マット・デイモンをはじめとする役者の演技もいいし、田舎町の景色をうまく撮っているところもいい。
 
 しかしながらかなり脚本に問題があると思う。脚本はマット・デイモンと、やはり出演しているジョン・クラシンスキが書いたらしいのだが、最初からちょっとあまり巧みとはいえない展開がいくつか見受けられ、最後のほうはどんどん強引になっていって面白みがぐんと減る。とりあえず最初の部分で、スティーヴは優秀な若手で会社から期待されているという設定なのに、スーに心配されたり最初の住民との会議で失敗したり、どうもそんなに優秀そうに見えないというところがあまり良くない。中盤のほうでも、イベントで住民の気を惹くことで町に金が入ってくることを印象づけようとするところがあるのだが、ここも「この程度のイベントでそんな効果あるかなぁ…」と疑わしく思ってしまう。一番脚本に問題があるのは最後のところで、ネタバレになってしまうのだが、あの程度の疑いで環境保護活動家のダスティンが自分の正体をバラしてしまうというのは相当に強引だと思った(ダスティンくらい頭が切れればいくらでもその場で言いわけを考えられるだろう)。全体的に、演技や演出が丁寧なのに話の展開が強引すぎて、せっかく野心的な題材を扱っているのに説得力に欠ける。