『ニック・フロストのおっさんダンス天国』…ではなかった、『カムバック!』(ネタバレあり)

 『カムバック!』を見てきた。

 主人公はエンジニアのブルース(ニック・フロスト)。少年時代はサルサの天才として賞を総ナメしていたが、「ダンスは女のやること」とクズどもに暴力を振るわれたのをきっかけにダンスをやめ、今ではメタボおやじにどんどん近づいていた。ところがアメリカから転勤してきた美しい上司ジュリア(ラシダ・ジョーンズ)がサルサを習っているのを知り、トラウマを乗り越えてサルサを再開しようと決める。ところが同僚で職場一のモテ男であるドリュー(クリス・オダウド)もジュリアを狙っており、汚い手を使ってブルースの恋路を邪魔しようとする。ブルースの恋とダンスの行方は…

 話はいろいろ緩い感じでご都合主義的だし、ジョークに関してはそんなに可笑しいかなぁ…っていうところもある。あと、いつもはだらしないけどナイスなアイルランド男キャラで、この映画のブルースに近いような役が似合うクリス・オダウドが「職場一のモテ男だけど超イヤな奴」設定なのは果たして個性にあってるのか、というキャスティングの問題はあると思う(最初に出てきた時からすげーイヤな奴なんだが、「ほんとにこいつ最後までこんな調子なん?途中で化けるのでは?」という疑いを持ってしまった…あと、こういう雰囲気でモテ男という設定は日本やアメリカではあり得ないだろうな)。

 それでもニックとクリスが駐車場でやるへんなおっさんダンス対決(←あまりにも息がピッタリあっていて本当に爆笑モノ!)を見るだけでも金を払う価値があるし、最後のブルースの「エル・コラソン」(「心」のことらしい)溢れるダンスの面白さや、結局主人公が優勝しないで終わるという女子スポーツものみたいな終わり方なども含めて、とても愉しい映画だった。やはりニック・フロストの演技が役柄にピッタリあっているのが良い。さらに脇の役者も面白く、ブスっとした顔で下品なことばかり言ってるが実はブルースのことを心配している親友ゲイリーを演じるローリー・キニアがとても良かった。最初はダンスを敬遠していたのに、最後にブルースが踊るところを見て目を輝かせるあたりの演技はとても見ていて楽しい。サイモン・ペグも一瞬だけ出ている。

 ちょっと本筋から外れるが、こういう感じの「ダンスに体型は関係ない!心と創造性が大事だ!」みたいな映画を子どもの頃に見せてもらっていたら自分もダンスとか好きになっていたかもしれないなと思った。学校教育にダンスが取り入れられたらしいが、私は創作ダンスとか体育でやらされたけど大嫌いだったし、ああいうのは足が長くて運動神経のいい子がやるもんだと思っていた。もしニック・フロストが踊るところを子どもの頃映画で見ていたら、ちょっと違う考えを持っていたかもしれない。