マーガレット・キャヴェンディシュが見たらちょっと喜んだかもしれない〜『海月姫』

海月姫』を見てきた。

 オタクの女子たち「尼〜ず」が男子禁制のコミュニティを作って暮らしている天水館が舞台。ヒロインであるクラゲオタクの月海(能年玲奈)に女装の麗人蔵之介(菅田将暉)とその兄で政治家である童貞の修(長谷川博己)がからんでくる…という話である。天水館を地上げから守るために蔵之介がファッションショーを開き、さらに修は月海に恋を…というような感じなのだが、オチがけっこう「途中で終わり」感があって若干不消化である。

 これ、実はうちの大学が映ってるらしいのと、予告を見た感じ話が17世紀イングランドの偉大な女性哲学者マーガレット・キャヴェンディシュが書いた戯曲『歓びの隠棲所』(The Convent of Pleasure、学問にハマった女性たちが作ってる男子禁制コミュニティに女装イケメンプリンスが潜入する話)にちょっと似てる気がしたから見に行ってみた。全然期待していなかったのでそこそこ面白かったのだが、なんかうちの大学がどこに映ってるのかよくわからなかった+思ったほど『歓びの隠棲所』に似てなかった(とはいえ、マーガレット・キャヴェンディシュが生きていてこの映画を見たら「私が使った設定が今も生きてる!」と思って面白がってくれたかもしれないが)。もっとぶっとんだガールパワーの話にできそうなもんだと思うのだが思ったより大人しく、別に見たらわかりそうな「石化」の場面にいちいち説明が差し挟まれるなどまどろっこしいところがあったり、また色気で修を騙そうとする稲荷翔子の手口がちょっとあまりにも「お色気悪女」として戯画化されすぎてて不満があったり、文句のあるところはけっこうある。菅田将暉の女装は大変に可愛らしくて魅力的だし、実質ヒロインで演技も良いのだが、惜しむらくはもうちょっと声が高いほうが良かった。私はああいう女装で男声ははっきり言って非常に好みなのだが、映画全体のバランスから言うと「ちょっとしゃべったくらいでは男っぽさが出ない」感じに作ったほうがいいように思う。

 ちなみに今年は見た映画全部についてベクデル・テストをパスしているかメモっておこうと思うのだが、この映画はパスしていると思う。オタク女子同士の会話で、食べ物など男性に絡まないものが何度かあったはずだ。