子どものためとはいえ、若々しくない〜子どものためのシェイクスピア『ロミオとジュリエット』

 あうるすぽっとで、華のん企画の子どものためのシェイクスピアロミオとジュリエット』を見てきた。これはかなり好き嫌いのある演出だと思うのだが、私は全く面白くなかった。

 まず、ロミオとジュリエットの間にケミストリというか、息の合った情熱的な雰囲気が感じられない。あと、ひとつの台詞をいろいろな人が言うスタイルは結局、台詞の全体としての詩的なまとまりを殺している気がするのであまり好きになれなかった。また、この芝居のロミオとジュリエットが初めて出会う場面やバルコニーの場面は、いつ他の人の眼に入るかもしれないのにふたりだけになってしまうという緊張感のある親密さがポイントだと思うので、こういうプライヴェートな場面にまでいろいろな人が出現して台詞を言うのはかなり興ざめだと思った。

 あと、『冬物語』ふうに「時」を出してくる演出も、まあこれは好みの問題だろうが私は全然感心しなかった。『ロミオとジュリエット』が短期間でジェットコースターみたいに進むスピード感のある芝居だというのはきちんとやればおのずとわかるものであって、わざわざそのテーマを強調しなくてもいいと思う。さらにここで長いスパンが特徴の『冬物語』みたいに、振り返りとか時の経過みたいなものを持ち込んでくると、せっかく若者のスピーディな話なのに全体的に老人ぽくなってたるいと思う(あの、回顧を使った枠ははっきり言っていらないと思った)。私は『ロミオとジュリエット』ならもっと若々しい話が見たい。