はなればなれてるかーい?〜『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』(ネタバレあり)

 ベル&セバスチャンのスチュアート・マードックの監督作『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』を見てきた。

 ヒロインはグラスゴーの街に住むオーストラリア出身のイヴ(エミリー・ブラウニング)。精神病患者の療養施設に入っていたイヴは退院してグラスゴーの街で音楽活動をはじめ、恋や友情を体験するが…というような物語である。基本的にバンド映画だと思う。

 演技をはじめとしていいところもあるんだけど、けっこう退屈だったと思う。とりあえず手持ちカメラを使って撮っているところがたくさんあって手ぶれ酔いのある私には結構つらかったという生理的問題もあるのだが、歌があまり密接にストーリー展開に結びついていないところとか、着るものとか音楽はすごく気合い入ってるわりに脚本の詰め方が足りないところとか(なんでイヴは最後にロンドンに行くことにしたのかとか)、いろいろツッコミどころがある。個人的に一番気に入らなかったのは、ブルネットでいかにも不思議ちゃんだったイヴが最後、いきなりブロンドのグラマーガールみたいになって(これがあまり似合ってない)ロンドンに向かうところで、こういうことを思ってはいけないと思いつつ「お前裏切ったな」みたいな気分になって私のダークサイドが噴出してなんかムカついてしまった上、旅立ちの演出に全然爽やかさを感じることができなかった(これは私が地方育ちで偏見があるのかもしれないが)。

 あと、全体的にすごくゴダールっぽくて、ヒロインのイヴはまるっきりアンナ・カリーナみたいだし、踊りの場面なんかは『はなればなれに』のマジソンダンスの場面や『女は女である』のミュージカルシーンの強い影響下にあると思う。ところが、撮り方は60年代はじめくらいのゴダールっぽいのに舞台設定は現代で(ケータイ使ってるしね)、それなのにインテリアとかは90年代くらいのレトロ感があるかと思えば70年代っぽかったり、ものすごく統一感がなくて浮き世離れした映画だったと思う(そのわりに防火ドアとかローカル線のデザインがすげー現代なのがなんかヘコむ)。いやなんか本当に、全体的にいろんなものがはなればなれになっている映画だったな。

追記:なお、この映画はベクデル・テストは完全にパスする。最初にイヴが自分の病気について先生と話すところで既にパスだ。