佐野隆弥『エリザベス朝史劇と国家表象』(九州大学出版会、2015)

佐野隆弥『エリザベス朝史劇と国家表象』(九州大学出版会、2015)を読んだ。

 エリザベス朝史劇の黎明期から、セネカ流歴史劇、マーロウやシェイクスピアなどのメジャーどころはもちろん、チャールズ朝の歴史劇までを幅広く取り上げてそこに出てくるイングランド観をとらえた労作で、たいへん参考になる。非常にたくさんの作品をとりあげているので、ひとつひとつの分析がちょっと短い、もっと読みたい…と思うところもないわけではないのだが、この作品数と長さだと仕方ないのかも。とくにシェイクスピアの『ヘンリー六世』三部作とマーロウの『エドワード二世』を「弱い王」というテーマ系でまとめたところは出色で、そうだそうだ!と頷きながら読んでしまった。