夢のようなシビアな世界〜『バレエボーイズ』

 『バレエボーイズ』を見てきた。

 オスロでバレエダンサーを目指す三人の少年、ルーカス、シーヴェルト、トルゲールの生活を追ったドキュメンタリー映画である。三人は大変仲が良く、それぞれとにかくバレエを愛し、夢を追う姿が清々しい。ということで純粋で清々しい作品ではあるのだが、実はけっこうシビアな映画でもある。三人の中では素人目にもルーカスが一番、華のある踊り手に見えるのだが、その直観に違わず、オスロの国立芸術アカデミーに合格した三人そろって合格したのち、ルーカスにだけロンドンのロイヤルバレエスクールからのオーディション招待が届く。努力の量とか性格の良さとかあまり関係なく実力だけが測定されるところがこういう舞台芸術の厳しいところだと思う。それで、オスロの国立芸術アカデミーに入ってもプロになれるかはまだわからないが、ロイヤルバレエに入ればたぶんプロへの道が開ける…というバレエ学校の格付けによる違いを三人とも完全に理解しているらしいところがまた実にシビアである。

 私としては、この三人の少年の努力を生き生きと撮るだけでも面白いものの、どっちかというとこの三人が直面しているバレエ教育の「制度」についてももうちょっと初心者向けに説明が欲しかったなーと思う。私に知識がないからだろうが、いったいどうやってルーカスがロイヤルバレエスクールに目を付けられたのかとかがよくわからないのである。また、唯一アジア系であるシーヴェルトが一箇所だけ、「自分は民族が違うのでちょっと気が引けるところがある」というような話をするところがあるのだが、ここについてももう少し掘り下げて欲しかった。

 ちなみに、これに関連して北欧諸国の舞台芸術について総合的に紹介した『北欧の舞台芸術』という本が出ており、バレエについてもいろいろ書かれているので、興味がある人は是非こちらを。

北欧の舞台芸術
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