前半は軽薄、後半はセンチメンタル〜『フォースタス』

 池袋の芸劇で鈴木勝秀演出、演劇集団円の『フォースタス』を見てきた。ファウスト伝説を主題とするクリストファー・マーロウの芝居である。

 これ、今までに二回、英語で見たことがあって、そのときも現代ではかなり上演が難しい芝居だと思ったのだが、今回もあんまりうまくいってないと思った。テキストをカットして1時間45分にしたのはいいのだが、カットしすぎと思えるところもある。紙やゴミ袋みたいな衣装は悪くは無い。本棚に囲まれた部屋の真ん中に丸い台と座席があり、そこにストーンズの'She's a Rainbow'が流れる前半はすごく軽薄でまるでマーロウというよりはベン・ジョンソンの諷刺劇を上演しているみたいな感じだったので、このまま軽く辛辣な調子が続くならそれはそれでまとまりがあると思ったのだが、最後はなんだかセンチメンタルな感じになったのでどうも前半と後半で調子があっていないように思う。また、老人ホームの枠が機能しているかも大変疑問で、とくに学者の暮らしについての職員のコメントは学者的にはなんじゃこりゃと思ってしまった。一番どうかと思ったのは、ヘレンのくだりを短くしてメフィストフェレス(女性である)とフォースタスのやりとりにしたところで、ここはちょっと湿っぽすぎると思った。

 まあ、私の好みとしてはもっとセックスとヴァイオレンスと学問が詰まっていたほうが断然好きなので、ちょっと大人しすぎた。ただ、これはかなり好みの問題かもしれない。