行くんじゃなかった〜『黒執事〜地に燃えるリコリス』(ネタバレあり)

 ミュージカル『黒執事〜地に燃えるリコリス』を見てきた。『ユリイカ 2015年4月臨時増刊号 総特集◎2・5次元 -2次元から立ちあがる新たなエンターテインメント』に原稿を書いてから、ちゃんと2.5次元の舞台を見に行かないとと思って行っていたのだが、正直行くんじゃなかった…金返せ…

 まあとにかく台本が21世紀の作品とは思えないほどひどく、ミソジニーたっぷりのゴシックホラーの劣化コピーみたいなあらすじである。スチームパンクっぽい世界観なので、使用人の立ち位置とか職業の位置づけとかに全くリアリティがないというのは別に気にならないのだが、安易に切り裂きジャックをとりこんだストーリーが稚拙すぎる。主人公の伯爵と執事が女王の命を受けて切り裂きジャック事件の調査を行うのだが、真犯人は伯爵のおばである女医で、なんと自分が子どもを生めない体になったせいで中絶手術を受けにきた娼婦たちが憎くなり、そのせいで死に神の力を借りて殺害するようになったという種明かしなのである。21世紀の舞台とは思えないほどとんでもなくミソジニー全開だし(ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』は19世紀末の作品でけっこうミソジニー的だがそれでもここまでひどくないぞ)、単純に殺人の動機としてもアホらしすぎる。しかも娼婦の描かれ方がものすごく偏見まみれで、育てられないからといって子どもを堕ろす娼婦たちをやけに安っぽい女たちとして描いており、イマドキこんな薄っぺらな人物観でよく舞台作れるなと思った。

 と、いうわけで、前半部分はまあよくわからないけどこんなもんかぁ…という感じで見ていたのだが、種明かしが出てくる後半部分は拷問であった。漫画は読んだことがないのでよく知らないが、もうちょっと事前に調べて地雷っぽいものはさけるべきだったのかもしれない。偏見とか先入観があってはいけないとあまり事前に調べなかったのがよくなかった。2.5次元なら、こんなしょうもないやつじゃなくて自転車とかテニスとかのやつを見に行くべきだったかな…