音楽は良かったが、芝居のほうが…北とぴあ『妖精の女王』

 北とぴあパーセル妖精の女王』を見てきた。シェイクスピア『夏の夜の夢』にパーセルがマスクの音楽をつけた翻案で、王政復古期のシェイクスピアの翻案としてはおそらく現代でも唯一上演されている演目だ。以前グラインドボーンで見たことあるので、これを生で見るのは二回目。

 パーセルの音楽のほうはとても美しく、あまり文句なかったのだが、たまに管楽器にちょっと繊細さが足りないかなーと思うところもあった(パーセルはとても繊細な音楽であるような気がする)。あまりオペラのことはよくわからないのだが、テノールのケヴィン・スケルトンは歌が素敵で動きも美しく、とても良かったと思う。

 演出や役者のほうはこの間のSPACのバージョンを基本にしている…のだが、これがちょっとなかなか困った感じだった。SPAC版はもとが野田秀樹版の翻案で、この『妖精の女王』では原作どおりにヘレナとかハーミアとかいう名前を使ってプロットも元に戻してあるのだが、なぜか野田版で使っていた料理のジョークとかはそのまんま残しているので、いったい何をしたいんだがよくわからないところがあったし、あまり音楽に合ってないと思う。最後のあからさまに日本風な結婚式の演出にもちょっとセルフオリエンタリズムを感じてしまったし、また妖精の魔術的な力がドメスティックな空間に縮小していくみたいな印象を受けてどうも好きになれなかった。まあ何から何まですごかったグラインドボーンを最初に見たのでつい点が辛くなってしまうのかもしれないが、『妖精の女王』みたいなデカい規模の演目は他の芝居の演出をそのまんま持ってくるんじゃダメで、音楽を組み込んだものとして最初から設計しないとあまりよくないのではという気がした。