3D船酔い注意〜『白鯨との闘い』(ネタバレ注意)

 ロン・ハワード監督『白鯨との闘い』を見てきた。

 ハーマン・メルヴィル(ベン・ウィショー)が『白鯨』の取材のため、海難事故にあった捕鯨船エセックス号の生き残りであるニカーソン(ブライアン・グリーソン)に会いに行くところからはじまる。ニカーソンはつらい思い出のことをなかなか話したがらなかったが、メルヴィルの説得で生還の記憶を語る。ニカーソンは自分は罪を犯したと思って悩んでいたのだが、こっそり脇で聞いていた妻(ミシェル・フェアリー)から「今の話をきいた後もあなたを愛している」と言われていくぶん心が安まる…というものである。

 全体的には、人に話すことで癒やしがもたらされるというこの枠組みが一番大事で、かつ面白いところだと言えると思う。回想場面では、前半ではナンタケットの捕鯨一家の出身で親の七光りで船長になったポラード(ベンジャミン・ウォーカー)と、ナンタケット出身ではないためポラードから差別されている経験豊かな一等航海士チェイス(クリス・ヘムズワース)の対立が描かれ、後半はばかでかいクジラに船が壊されて壮絶な遭難をすることになる様子が描写されている。海の嵐の様子はけっこう迫力があり、3Dで見るとちょっと船酔い気味になる。全体的によくできた海洋映画だとは思うのだが、規格外の文学作品である『白鯨』に比べればまあかなりふつうの話だし、前半の人間ドラマと後半の遭難譚でちょっと分離したような印象は受けるなと思った。

 なお、この映画はベクデル・テストはパスしない。女性は2人しか出てこないし、この2人は作中で会わないからである。