哲学と歴史叙述〜ニコラス・フィリップソン『デイヴィッド・ヒュームー哲学から歴史へ』

 ニコラス・フィリップソン『デイヴィッド・ヒュームー哲学から歴史へ』永井大輔訳(白水社、2016)が出た。同じ著者の『アダム・スミスとその時代』には翻訳をチェックする段階でちょっと関わっていたのだが、この本には全然関わってない…ものの、訳者が家族なので準備中からずっと話はきいていた。

デイヴィッド・ヒューム:哲学から歴史へ
ニコラス・フィリップソン
白水社
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 歴史家としてのデイヴィッド・ヒュームを描くという評伝である。ヒュームの『イングランド史』はあまり今では注目されていない著書だが、ヒュームはこの本において自らの哲学に基づく歴史叙述を行っているらしい。フィリップソンはヒュームが18世紀スコットランドにおける最も洗練された哲学を政治史に接続させるさまをダイナミックに浮かび上がらせており、歴史叙述と哲学の関係を考えさせられる。あと、ヒュームの歴史はまあ今では古いのだろうが、ジェームズ一世とエリザベス一世の比較分析などは今読んでもかなり面白そうだと思えるところもあり、『イングランド史』じたいにちょっと興味を惹かれた。