吉祥寺シアターでこんにゃく座のオペラ『クラブマクベス』を見てきた。林光作曲、郄瀬久男台本による『マクベス』の翻案である。
疲れた勤め人の男がひょんなことからマクベスを上演しているクラブに入り込み、いつのまにか芝居の内容に自分を同一化していってそこで上演されているマクベスにとってかわってしまう…というものである。最初は半信半疑で『マクベス』を観劇していただけだったのだが、途中から自身がマクベスとして芝居に出演するようになってしまう。
前半は正直、この枠の必要性がイマイチよくわからなくてちょっとたるいなーと思ってしまったのだが、後半、勤め人の男がマクベスとして舞台に出始め、夢とうつつが完全に入り交じってしまうあたりからどんどんテンポも良くなってぐっと内容が引き締まり、とても面白くなったと思う。オペラは詳しくないのであまり音楽についてはきちんと評価できないのだが、魔女の歌なんかはミョーに耳に残る旋律で、要所要所で話を盛り上げていた。音楽の使い方といい、マクベス役になってしまった勤め人が本来自分が出ていない場面にすら顔を出してコメントをしているあたりといい(マクダフとマルカムの交渉場面にいちいちツッコミを入れるあたりがおかしい)、ブレヒトっぽいと思う。割とカットしているのだが、後世の加筆と考えられているヘカテの場面は残して、ヘカテを派手な女性パフォーマーが演じているところはクラブという設定が生きていた。オチがちょっと好きではないという気はするが…
