リチャード・ギアが普通の退職者のわけはない〜『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』

 『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』を見た。

 前作の『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』はご老人、とくにおばあさんたちを中心にユーモアのあるちゃんとした映画を作ろうというやる気があって、地味だが結構面白い映画だったと思う。イギリスのご老人たちがインドで隠退生活をするという内容で、「美しいインドの古都で新しい自分を発見」みたいなトーンは若干オリエンタリズムの名残があってどうかなーという感じはするものの、デーヴ・パテル演じるインドの若者ソニーが生き生きしていること、マギー・スミス演じるミュリエルの人種差別主義がわりと容赦なく描かれていることなどもあって、英語圏のこの手の映画にしてはそこまでオリエンタリズムが鼻につかない感じになっていたし(皆無というわけではない)、展開も洗練されている。ジョン・マッデン監督はちょっと過小評価されてると思うのだが、若干保守的とは言えきちんとした映画を作る人だ。

 この『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』は、まあ悪くは無いのだが第一作よりはちょっと見劣りするかなという感じだった。ご老人たちの物語よりは、婚約者のスナイナとの結婚を控え、ビジネスも拡大を計画中のソニーがかなり中心になっているのだが、ソニーがやたらと不安になって取り乱すあたりはちょっと未熟さを強調しすぎではという気もする。イヴリンも新しい仕事とダグラス(ビル・ナイ)との関係両方の進展について悩んでいて、ここはソニーの話と並行するようになっている。新しいキャラとしてはホテルにやってきた謎の客、リチャード・ギア演じるガイがが出てくるのだが、このギア演じるガイが異常にセクシーなおっさんなので、そこはちょっと見る価値あるかもしれない…ものの、どう見てもふつうのお客には思えないのでまあ出てきた瞬間ネタバレである。とはいえ全体的に相変わらずユーモアをもって老いとか女性の人生の選択を描いていて、気持ちよく見ることができる作品だ。

 なお、この作品はベクデル・テストはパスする。いくつかパスしそうなところはあるが、とくにラヴィニアとスナイナが着るものの話をしていたらコーヒーがこぼれる、という一連の会話でパスするだろう。