サイモン・ペグのアイドル映画〜『ミラクル・ニール』(ネタバレあり)

 テリー・ジョーンズ監督、サイモン・ペグ主演『ミラクル・ニール』を見てきた。

 宇宙人の集団が地球を発見し、地球が救済に値するレベルの星かを決定するため、テストとして住人のひとりに全能の力を与えることにする。テストに合格しないと地球は破壊されるので、選ばれた人は責任重大だ。ロンドンに住んでいる学校教員ニール(サイモン・ペグ)がこれに選ばれ、何も知らない間に全能の力を与えられてしまう。さて、地球の運命やいかに…
 モンティ・パイソンロビン・ウィリアムズがキャストに入っているわりにはどうってことない感じのSFコメディである。すごくつまんないというわけではなく、笑えるところもけっこうあるが、最後はバタバタしてていろいろ強引すぎ、あんまりよくできた話ではない。例えばかわいそうなレイ(サンジーヴ・バスカー)はいったいあの後ニールと仲直りできたのかとか、キャサリン(ケイト・ベッキンセール)が自分を魔法で騙した(と思われている)ニールとあんなにすんなり仲直りしてしまうのはいくらなんでもできすぎではないか、とか、終盤話のつながりとしておかしいところがいっぱいある。
 まあしかしこの映画は完全にサイモン・ペグのアイドル映画であるので、しょうがないのかもしれない。世の中には「サイモン・ペグのアイドル映画」という特殊なジャンルがある。サイモン・ペグは広く愛されているので、皆サイモン・ペグがかわいいところを見たい。しかしながらサイモン・ペグ主演の傑作が作られることは少なく、とくにニック・フロストエドガー・ライトが組んだ三部作が終わってしまった今、あのレベルでキレッキレのサイモン主演作はなかなか出てこないかもしれない。『スター・トレック』や『ミッション・インポッシブル』のようなビッグバジェットの作品でもサイモン・ペグはカワイイが、助演なのでそんなにずっとスクリーンに映ってるわけじゃない。ゆえにサイモン・ペグ主演のアイドル映画が必要とされているのである。そしてこの『ミラクル・ニール』はかわいいサイモン・ペグをずっと撮ってるみたいな映画で、早い話がとても正統的なアイドル映画である。
 もうひとつの見所は下品でアホだがめんこい犬のデニスである。ロビン・ウィリアムズが声をあてており、この後にすぐ亡くなってしまったとは信じられない楽しさだ。ネタバレになるが、デニスがニールを自殺から救おうとして結局自分が救われてしまうという場面があり、ウィリアムズが自殺してしまったことを考えるとなんだか見ていて悲しくなる。
 なお、この映画はベクデル・テストにパスしない。キャサリンが他の女性と話すところはいくつかあるのだが、だいたいニールの話か、仕事関係の男性の話で、それ以外の話題があまりない。