『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』

 『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』を見た。

 アイヒマンの裁判を中継するテレビ番組を製作したチームについての映画である。マーティン・フリーマンアメリカから来たプロデューサーのミルトン・フルックマン、アンソニー・ラパリアが監督のレオ・フルヴィッツを演じる。

 全体的に大変地味な作品で、正直ちょっと映画としては盛り上がりに欠けると思った。志は高い映画なのだが、基本的にレオがアイヒマン人間性をとらえようとして全然うまくいかず、方針変更して世界に対してナチスの犯罪を暴く役割を果たす…という展開である。最初はイスラエルの法廷から撮影許可が出るかどうかでモメるなどちょっと事件も起こるし、途中でスタッフがあまりのショックに倒れてしまうなどちょっとした展開もあるのだが、全体的に起伏が少なく、またあんまり記録映像の使い方もうまくいっているとは思えなかった。ホロコーストの被害のひどさと、被害にあった人々の思いを丁寧に描写した作品ではあるのだが、『ハンナ・アーレント』のほうがだいぶ巧みな映画だったと思う。

 なお、この映画はベクデル・テストはパスしないと思う。女性同士が話をする場面がほとんどない。