全部夢でできている〜ITCL『テンペスト』

 インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドンの『テンペスト』を白百合女子大学で見てきた。ポール・ステッビングズ演出で、毎年日本に来ている劇団である。ほとんど大道具もないシンプルな舞台で、非常に少ない人数でとっかえひっかえいろんな役をやるのが特徴の劇団だ。

 この上演も役者6人でやるのでゴンザーローの役なんかはカットされ、ゴンザーローの台詞は別の役が言うようになっている。有名なユートピアの台詞は最後にファーディナンドミランダが出てくるところで若い2人が言うようになっており、この2人が将来良き君主になるのかもしれないということと、それでも若さのせいで少々理想主義的にすぎることを暗示している。こういう変更はわりと良かったと思うのだが、ただ役者の着替えの都合でトリンキュローがいろいろひとり芝居をするところが挿入されているのはちょっといらないのではと思った。とくに傘のスケッチとお酒のスケッチはあまり要らないかも…笑えるが、なんかちょっと間延びする。

 このプロダクションは終わり方がとても独特だ。全体的にエアリアルがとても良く、プロスペローへの愛憎が入り交じった役柄として生き生きと演じられていたと思うのだが、最後にプロスペローがエアリアルを自由にしてやった後、エアリアルがプロスペローが捨てた魔法の書を拾ってプロスペローに渡し、その瞬間におそらくは魔術のせいでプロスペローが苦しみはじめ、苦しみが終わった時にはエアリアルが倒れて死んでしまう。倒れたエアリアルの肉体の上で、プロスペローが本来はここではなく終盤のエンタテイメントの場面で言うはずの"We are such stuff / As dreams are made on, and our little life / Is rounded with a sleep."の台詞をここで言う。妖精や魔術の時代が全て終わっていくかのような終わり方だと思ったが、ちょっと非常に複雑な余韻があってあまり自分でもどう解釈すべきか考えがまとまっていない。