超セクシーな『カルメン』のバレエ版翻案〜マシュー・ボーン『ザ・カーマン』 in シネマ

 マシュー・ボーンの『ザ・カーマン』の映画館上映を恵比寿ガーデンシネマで見てきた。ボーンの主な演目では唯一見たことのないものなので楽しみにしていたのだが、大変面白かった。とにかくセクシーである。

 音楽はビゼーの『カルメン』を使っているのだが、物語はあまり関係ない。60年代のアメリカの田舎町「ハーモニー」にあるガレージとダイナーが舞台で、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(未見)が下敷きになっているらしい。ガレージの所有者であるディーノの妻ラナは、街に流れてきてガレージで働くようになった旅人ルカに惚れて関係を持つ。ラナの妹でダイナーのウェイトレスであるリタは同じくガレージで働いている大人しい若者アンジェロに恋をしていたが、アンジェロもルカに誘惑され関係を持つ。嫉妬しはじめるようになったディーノはルカとケンカになり、ルカとラナはディーノを殺してしまう。行き違いでアンジェロがディーノ殺しで逮捕される。ルカは良心の呵責に苦しむようになり、一方リタはルカが殺人犯だとアンジェロに伝える。アンジェロは自分に性的虐待をしている看守を殴って脱獄し、銃を持ってガレージに向かい、ルカを殺そうとするが、すんでのところでラナがルカを射殺する。

 とにかくセクシーでホットな内容で、話も割合わかりやすいし、さらにとても緊張感のあるダンスが全編を支配していて飽きない。セックスと暴力描写はかなり強烈だが、バレエで表現されているのでそこまで露骨というわけではなく、ある種洗練された欲望の表現になっている。是非ライヴで見てみたいものだ。