デコボコ気味の脚本を救う良い演技〜『生きうつしのプリマ』(ネタバレあり)

 マルガレーテ・フォン・トロッタの新作『生きうつしのプリマ』を見た。

 恋も仕事もうまくいっていない歌手のゾフィ(カッチャ・リーマン)は父パウル(マティアス・ハービッヒ)に呼び出される。亡き母エヴェリンに生きうつしのオペラ歌手カタリーナ(バルバラ・スコヴァ)がメトロポリタンオペラに出演していて、何か縁があるとしか思えないという。父に頼まれたゾフィはニューヨークまでカタリーナに会いにいくが…

 母親の過去を探るうちに昔の恋愛事件などが出てくるという展開のミステリアスな話なのだが、脚本がかなりデコボコしていて展開になめらかさが無い。いろいろ昔の手紙が出てきたり、情報が後出しで公開されたりするのだが、もうちょっと発見過程を盛り上げたり、経過をわかりやすく整理したりしないといけないと思う。またまたゾフィがフィリップとデキてしまったりするあたりの展開もかなり強引だ。ちょっと細かいところをすっ飛ばしすぎである。

 ただ、ゾフィを演じるリーマンとカタリーナを演じるスコヴァの演技が大変良く、2人ともとても魅力的なので、見ている間は少々展開に問題があっても気にならないというところがある。全体的に女性が生き生きしていて男性は添え物みたいなところもある映画で、ベクデル・テストはもちろんパスする。また、風景の撮影などをうまく組み合わせた編集・演出なども良く、最後は家族、とくに姉妹愛の物語にあたたかく落としている。