101号室での101分間~ロンドン・プレイハウス『1984』

 ロンドン・プレイハウスで『1984』を見てきた。ジョージ・オーウェル1984』の翻案である。ロバート・アイク(Ickeなので「イック」かも)、ダンカン・マクミラン、ダニエル・ラゲットが翻案・演出を担当している。原作に出てくる拷問室、101号室にひっかけて上演時間が101分だったりする。

 ストーリーはかなり切り詰められており、テンポは良い。セットも最初はほぼ一部屋だけで、部屋の外に移動するとそれがカメラで撮影されてセット上のスクリーンに映るという仕組みになっている。後半はこの部屋が撤去されて白い101号室が登場する。ニュースピークに重点を置いているのと、また「これは後世に残された記録である」というような枠組みがあるのが特徴である。

 最初は短い場面を派手な暗転で区切る場面転換がちょっとあざとい気がしたのだが、後半はかなりスリリングで良かったと思う。とくに枠組みのせいもあって書くことや記憶することに非常に焦点をあてた演出になっていて、ウィンストンが文字、つまり記録を書くところをスクリーンにうつして見せたりする。101号室では、こうしてウィンストンが記録にして残そうとした記憶が改竄・悪用されていく様子を見せる。最後にコーラスみたいな台詞で「このお話はいったい、信頼できる記録なのかな…?」みたいなことが提示されて終わる。この終わり方はそれまでの緊密な展開に比べるとちょっとパッとしないような気もしたのだが、全体としてはそんなに悪くなかったように思う。
 
 また、原作のジュリアの描写はちょっとミソジニー的だと私は思っているのだが、芝居のほうはそれほどでもなかった。ジュリア役のハーラ(「ヘイラ」かも)・ヤナスの演技が生き生きしていて、可愛い女性なのだが単にそれだけではなく、少し熱くなり気味のウィンストンに比べて地に足のついた誠実な女性であるという印象を与える。