おばあちゃん歴女百合〜ピーター・シェーファー作、黒柳徹子主演『レティスとラベッジ』

 六本木のEXシアターで、ピーター・シェーファーのコメディ『レティスとラベッジ』を見た。演出は高橋昌也で、黒柳徹子麻実れいが主演である。

 ヒロインであるレティス(黒柳徹子)はカントリー・ハウスのガイドをつとめているのだが、型どおりの解説がつまらないと思っていろいろ尾ひれをつけまくったため、歴史的事実に即してない話をしているという苦情殺到でクビになってしまう。最初はレティスに憤慨していたが、クビということで気の毒に思った歴史保存委員会職員のロッテ(麻実れい)はレティスの再就職を助けようとする。ふたりは親友になるが、レティスが誤ってロッテに大けがをさせてしまう事件が起こり…

 セットはカントリー・ハウス、歴史保存委員会のオフィス、レティスの部屋がメインである。けっこう作り込んだセットで、とくにいろいろな小物が置いてあるレティスの部屋はかなり見映えがする。レティスの部屋は半地下で窓から人が歩いているところが足だけ見えるという設定で、ここが細かい演出で使われていてなかなか気が利いている。

 黒柳徹子演じるレティスはかなりのお年で、台詞の滑舌やもたつきなどはちょっとイマイチなところもあるのだが、とにかく可愛らしいおばあさんであることには間違い無い。一方、麻実れいのロッテはレティスよりかなり若い中年女性という感じだ。基本的にはこの2人がお互いへの反感を乗り越えて絆を深めていくという女性同士の友情物語で、綿密な親密さの描写はちょっとおばあちゃん(+歴女)百合といった風情である(ロッテはレティスより若いのでまだおばあちゃんという年ではないのだが)。最初は歴史を粉飾したせいでクビになってしまうレティスがかわいそうな人みたいに描かれていてどうなることかと思ったのだが(いくらなんでもガイドさんが嘘八百を並べてはいかんから回顧も仕方ないだるお)、だんだん過去や美にこだわるロッテの情熱がきちんと描かれるようになり、お芝居の面白さなどのモチーフも盛り込まれて非常によくまとまっていると思う。ロンドンの都市計画に対する諷刺などもふんだんに込められており、楽しい作品だ。