綺麗なんだけど、脚本が…『ダゲレオタイプの女』(ネタバレあり)

 黒沢清監督『ダゲレオタイプの女』を見てきた。黒沢清がフランスで撮った作品である。

 ジャン(タハール・ラヒム)はダゲレオタイプを用いた作品を作っている写真家ステファン(オリヴィエ・グルメ)の助手になる。ステファンは妻のドニーズに先立たれ、娘マリー(コンスタンス・ルソー)をモデルに作品を作っていた。ところがステファンの周りで怪奇現象が起き始め…

 全体として映像はとても綺麗だし、雰囲気がある。植物から建物までいろいろな風景を細やかに撮影しており、幽霊が出てくるところとか、部屋に指す光の加減などにも工夫がある。

 ところが脚本のほうにかなり問題があり、話がさっぱり盛り上がらない。ダゲレオタイプなんてホラーの道具立てとして凄く効果的に使えそうな気がするのに、最初ちょっと思わせぶりに出てくるだけで全然生かされておらず、これなら普通の絵画や写真でいいじゃんか…という気になってしまう。幽霊だか妄想だかわかんない何かについてもかなり先が読める展開で、とりあえず怖さは全く無い。ロマンスとしても、ジャンの恋人になるマリーが幽霊というよりかむしろ空気みたいだし(後半はマリーがほとんど自己主張しないので、むしろ幽霊じゃなくジャンの妄想なのではと思うが)、細かい心理描写みたいなものは全然無くて面白みに欠ける。とりあえず台本をもう少しなんとかしたほうがいいと思った。

 なお、この作品はベクデル・テストにパスしない。女性登場人物同士が会話する場面が無い。