面白くは無いが、意欲はある翻案〜『To Be or Not To Be −ハムレットより−』

 鷺ノ宮の古民家asagoroで演劇ユニットノイルによる上演『To Be or Not To Be −ハムレットより−』を見た。劇場はなんとここ↓

 『ハムレット』をバラバラにして1時間半くらいに縮め、現代日本の家庭劇として再構成したものである。母親が幼い頃に出ていってしまってそれ以来女性不信になっている「殿下」と、関西弁を話す献身的な恋人オフィーリアが、殿下の父の死をきっかけに出ていった母を拉致して古民家に監禁するという物語である。

 話はそんなに面白くは無い。『ハムレット』の政治的次元を完全に削ぎ落として小さいスケールの家庭劇にしており、コンセプトは悪くないし翻案としてはかなりきちんとまとまっている。しかしながら、殿下がただのDV彼氏かつミソジニーをこじらせた悪い意味でのマザコン男性なので見ていて辟易してくるのと、オフィーリアがこれまた所謂「メンヘラ女」(この言葉は嫌いなのだが、まさにこういうステレオタイプが表すもの)で、黒いレースなんかを使ったゴスい服に包帯やらなんやらしていて殿下と共依存ということで、定型的にすぎるキャラクターには全くと言っていいほど魅力が無い。ただ、終わり方に少しひねりがあるのと、役者がかなり頑張っているのと、古民家という場所をうまく使って光や影の加減、入退場の方法なんかに工夫をしているので最後まで見られるものになっている。途中で流れる、『サザエさん』に各国のハムレットの映像をマッシュアップしたビデオもけっこう良くできていた。こういうわけで、うまくいっているとは言えないかもしれないが野心的で工夫はあるプロダクションだったと思う。