この題材でちゃんとした映画にできるのはすごいが、たまに殺意が…『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

 リチャード・リンクレイター監督の新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』を見た。

 1980年の南東テキサス州立大学を舞台に、野球部の寮に入る新入生ジェイク(ブレイク・ジェナー)を主人公として新学期開始前の3日間を描いた作品である。

 とりあえずこの題材でちゃんとした映画にできるのはスゴい。若者が騒いだり恋愛したりするだけでたいした話も無いし、たぶん普通に撮ったらアホの大学生がうるさいだけのものすごくくだらない映画になると思うのだが、そうはなっておらず、ジェイクの恋模様の描き方なんかをはじめとしてけっこうちゃんとしているし、面白いと思えるところもたくさんある。時代の雰囲気をよくとらえていて、音楽や着るものなんかも丁寧に時代考証されている。

 しかしながら、それでも全体的に野球部のリア充男どもがちゃらちゃらしているというだけでそこはかとなく殺意を覚えるところがあった。とくに良い子のはずのジェイクが演劇をやっている真面目な学生ビバリー(ゾーイ・ドゥイッチ)に惚れて、その前の夜に遊んでいた派手な女の子たちとビバリーを比べて「頭のいい子だからああいう子たちとは違うんだ」みたいなことを言うところなど、ナチュラルに大学の女の子を格付けしていてなんかムカついた(なお、聞こえる女性同士の会話がほとんど無いのでベクデル・テストはパスしない)。