ショーガールの心意気〜バーレスク的な映画としての『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

 すディーヴン・フリアーズの映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』を見た。実在の音痴なソプラノ歌手。フローレンス・フォスター・ジェンキンスに関する伝記ものである。

 ヒロインである女相続人フローレンス(メリル・ストリープ)は物凄い音痴だが、音楽を愛してやまないチャーミングな人物である。年下のハンサムな夫シンクレア(ヒュー・グラント)は病弱なフローレンスの生活から財産管理、音楽活動まであらゆる面で妻を支えている一方、最初の夫から梅毒をうつされたフローレンスとは性生活が無いため別に恋人がいる。そんなフローレンスがとんでもない音痴であるにもかかわらずクラシックのコンサートをしたいと言いだし、シンクレアやピアニストのコズメ(サイモン・ヘルバーグ)を巻き込んでロイヤル・アルバート・ホールにまで進出することに…
 
 全体的にすごくバーレスク的な心意気を感じる作品だった。たしかディタ・フォン・ティースが言っていた言葉だと思うが、バーレスクのパフォーマンスというのは何かが上手だとか訓練を受けてるとかいうのではなく、カリスマを持っている女が舞台に立ってやることだ。フローレンスはものすごく歌が下手なのだが非常にカリスマのある女性で、衣装もキンキラキンの派手派手なものであり、もちろん舞台でストリップディーズをしたりするわけではないのだがその全身から醸し出す派手でお茶目な雰囲気だけでお客さんを喜ばせてしまうところはまさに花形ショーガールという感じだった。時代的には1940年代ということで、バーレスクが成熟して少しずつ衰退していく時期だと思うので、フローレンスはショーガールの時代に最後に咲いたあだ花という印象を受けた。

 さらにこの映画にはとてもいいキャラのショーガール、アグネス(ニナ・アリアンダ)が出てくる。アグネスは富豪のスタークと結婚して上流階級に入った元ショーガールなのだが、派手なブロンドにちゃきちゃきしたしゃべり方、まさに40年代グラマーガール風の完成された下品さをたたえた女性である(物凄く褒めてるつもり)。最初はフローレンスの歌に大爆笑していたアグネスだが、やはりショーガール魂をくすぐられるところがあったのがのちにフローレンスの大ファンになり、最後の大舞台ではフローレンスを応援するため、下手クソな歌を嘲笑する客を叱りつける。この手の派手な女性がバカにされず、魅力のあるキャラとして出てきて女性同士の連帯を示すところはとてもいいと思った。なお、映画に出てくるフローレンスのファンはだいたい女性で、ベクデル・テストもフローレンスとコンサートを聴きに来た女性たちの会話でパスする。

 しかしながら、キャンプな映画と言ってしまうにはちょっと真面目すぎるところがあるし、またおそらく元プレイボーイで金目当てだったのだろうがやがてフローレンスにほだされてしまうシンクレアや、隠れゲイと思われるコズメなど男性陣が絡む部分はけっこうストレートに「いい話」に持っていっているので、私の好みからするとはっちゃけ方が足りないとは思った。もっとムチャクチャにはじけた映画になってもよかったと思うのだが、監督のスティーヴン・フリアーズの趣味からするとそうはならなかったか…