淡々と進む物語〜『ミス・シェパードをお手本に』(ネタバレあり)

アラン・ベネット原作、ニコラス・ハイトナー監督『ミス・シェパードをお手本に』を見てきた。舞台の映画化である。

 ベネットの半自伝的作品で、実際に役柄として著者アラン(アレックス・ジェニングズ)が登場する。アランの家の玄関前にバンをとめて住んでいたホームレスの老女、ミス・シェパード(マギー・スミス)の関わりを描いた物語である。ミス・シェパードが亡くなるまでを描いているのだが、実話ベースということもあってリアルな展開でたいした事件が起こるわけではなく、アランとミス・シェパート、アランと老母などの関わりやご近所付き合いを軸に淡々と物語が展開する。最後はいろいろな人々の死を経験し、人生について考えたアランがもっと生を楽しまないとと思ってボーイフレンドを作るというオチになる。

 本当にたいしたことが起こるわけではないのだが、劇作家として自分を分裂させ、いろいろな分析をするアランの自分にツッコミを入れるみたいな台詞を中心として随所にユーモアが見受けられるし、マギー・スミスを中心とした役者の演技が達者で退屈しない。とくにマギー・スミスの演技はたいしたもので、ミス・シェパードを欠点と人間味をたっぷり持ち合わせた奥行きのある女性として描き出している。ベクデル・テストはミス・シェパードと近所の女性たちの短い会話でパスする。