悪くはないが、セットがイマイチ〜『シェイクスピア物語〜真実の愛』

 KAAT神奈川芸術劇場で『シェイクスピア物語〜真実の愛』を見てきた。『恋におちたシェイクスピア』の舞台化なのだが、ロンドンの舞台版とは無関係のようだ。

 話はだいたい映画と同じなのだが、少々変更もあり、とくにクリストファー・マーロウや売春宿の女たちなどの役が少し大きくなっている。全体的に「恋愛が芸のこやし」みたいな原作映画どおりの古典的というか保守的なテーマの作品で、明らかにゲイのマーロウがスランプに陥ったシェイクスピアに「恋愛でもすれば」みたいにすすめたりする。歴史的事実には全然、基づいていないのだが、まあそれはしょうがない。展開はセンチメンタルにすぎるところがあるが、主演のシェイクスピア(上川隆也)とヴァイオラ(観月ありさ)はもちろん、マーロウ(松尾敏伸)やネッド・アレン(五関晃一)などはキャラクターにあった個性的な華があり、やりとりを見ているだけで十分楽しい作品だ。

 ただ、セットがあんまりよくないかなと思った。二階建てのセットで下が平土間の舞台、上がバルコニーみたいになっており、左右に斜めの階段がついている。この二階の部分、お屋敷のバルコニーとか売春宿の場面で使う時はいいのだが、ローズ座やカーテン座の場面ではこの二階部分が舞台裏(一階)の設定になっており、そこから一階に降りてきて演技を…というふうになるので、ちょっと時空が歪んで見える。その上、お芝居で殺陣をやっているという設定の場面なんかは二階部分も舞台という設定で階段をのぼったり降りたりしながら劇中劇をやっているので、かなり空間がとっちらかって見える。もうちょっと整理された空間作りをやったほうがいいのではという気がした。