愉快なファンキー時代劇〜『シン・浅草ロミオとジュリエッタ』(ネタバレあり)

 浅草フランス座東洋館で劇団ドガドガプラス『シン・浅草ロミオとジュリエッタ』を見てきた。フランス座に入るのは初めてである。映画監督の望月六郎作・演出によるもので、一応シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の翻案だが、台詞はほとんど残っておらず、ちょっと参考にした程度でほとんど別の話と言っていい。紀里谷和明演出『ハムレット』があまりにもひどかったので映画監督演出のシェイクスピアにちょっと必要以上に警戒してしまっていたのだが(いくらなんでも賞とかとってるベテランの監督だからそこまで…とは思ったけど)、まあクセはあるがふつうにリラックスして楽しめる内容だった。心配して損した。

 舞台は生類憐れみの令の時代の吉原。被差別民の頭である犬神弾左衛門(水戸部千希己)の跡取り娘である女武芸者、樹里恵(じゅりえ、古野あきほ)と赤穂浪士でたまに狼男?となる毛利小平太(丸山正吾)、別名狼眼男(ろめお)の許されぬ恋を、遊女と戯作者の恋模様などを織り交ぜて描くファンキーな時代劇である。最初はなかなかロミオもジュリエットも出てこないのでどうしたことかと思ったが、途中からはけっこうちゃんとした恋愛ものになった。前半の遊女たちのすったもんだのところはかなりエロ描写もあるのだが後半はなりを潜め、若い2人の純な恋まっしぐらになるのでそこは少々驚いた(たいていの『ロミオとジュリエット』は、2人が初夜を迎える場面をこれでもかというほどエロティックに演出するので)。わざとアホみたいにハイテンションで変なギャグを織り交ぜた展開は寒くなりがちだが、うまく加減していて白けるギリギリのところでやめているのでそんなに鼻につかなかった。バカコメディのようでいて、弾左衛門や遊女に対する差別、中国から来た難民の青鷺(璃娃)の話なんかを織り込んでいて社会に対する目配りがあるところも効いている。最後に戯作者の向島が恋する2人を助けて役者にし、2人の主演作を樹里恵の母である弾左衛門が見に来るというオチも気が利いていて、ちょっとコルネイユの『舞台は夢』を思わせる。この手の派手なドタバタ時代劇ものとしては古典を押さえつつ換骨奪胎していてかなりうまくいっているほうだと思う。

 ただ、あまり良くないかなというところももちろんある。序盤は相当な数の人が素早く紹介される一方、主役の2人はなかなか出てこないのでかなり忙しい展開になって疲れるところがある。役者はみな個性的でかなり頑張っているし、女の弾左衛門(水戸部千希己)のド迫力とか凜々しい美貌の樹里恵(古野あきほ)などとくに女優陣は魅力があるのだが、若手は全体的にたまに台詞が早口すぎたり、もたついたりするところがあるし、またダンスの場面で踊りがあってないところも少し見受けられる。一番気になったのは脇役の衣装である。主役級の登場人物や遊女たちは和洋折衷の奇抜でど派手な格好なのでいいのだが(趣味がキャンプというかすごくバーレスクっぽいので、バーレスククラスタにおすすめ)、脇役は「そのズボン、ユニクロしまむら?」みたいな感じのいかにも現代っぽい地味な服を着ていてちょっと見映えが安っぽい。もう少し全体に統一感を持たせるような衣装を着せたほうが見た目が華やかになるのではと思った。