共感覚も少しだけ登場!〜『僕と世界の方程式』

 『僕と世界の方程式』を見てきた。実際に数学オリンピックに出たダニエル・ライトウィングの実話に基づいているらしいのだが、名前は変えてあるしけっこうな部分は創作らしい。

 主人公はイギリスに住む数学の天才少年ネイサン(エイサ・バターフィールド)である。ネイサンは自閉症スペクトラムである上、幼い頃に大好きな父親を目の前で交通事故により亡くたショックもあって、うまく人とつきあえずぎごちない日常を送っていた。母親のジュリー(サリー・ホーキンズ)は息子を心から愛する善良な女性だが、数学などのことはよく知らないため、全てにおいてネイサンをフォローできるわけではないし、ネイサンの発言や行動に傷つけられてしまうこともある。ネイサンは多発性硬化症で酒飲みすぎの気があるハンフリーズ先生(レイフ・スポール)のもとで数学の特訓を受け、数学オリンピックのイギリス代表候補に選ばれる。強化合宿で初めて家を離れて香港に向かい、新しい友人もでき、世界が広がっていくが…

 ネイサンの天才ぶりや数学オリンピックを目指すスポ根的頑張りよりも1人の子どもが精神的、知的に成長していく様子を丁寧に撮った映画という感じで好感が持てる。原題はX+Yというもので、数学の問題を示している他にネイサンが初めて恋をする(女の子と男の子)のことを示しているのかな?ただ、ネイサンの心境とかは大変丁寧に描かれているし、数学合宿のところでは自閉症などふつうの人と違う者同士だからといってとくにわかりあえるわけではないとか(私は自閉症スペクトラムではないのだが共感覚者でもあるあるああいうこと!と思った)、数学には音楽など芸術も関連していて幅広い知識が発想の助けになるとか、いろいろ面白いところがたくさんある。恋の相手である中国の数学の天才少女チャン・メイ(ジョー・ヤン)のキャラもけっこうよく描けている。ただ、レベッカがチャン・メイに嫉妬して告げ口するという展開はちょっとひどいのではと思った。

 ネイサンには共感覚があるという設定なのだが、共感覚じたいはあんまり出てこない。ただ、一箇所共感覚者として凄く面白いところがあった。整数を四色に塗り分ける問題でネイサンが混乱するという場面があるのだが、私も一瞬「整数はもともと色がついてるのになぜ塗り分けを」と思って意味がよくわからなかった。私は数学の才能が無い共感覚者なので、「正の整数を四色に塗り分けます」問題は「9種類の動物を四色の札で分類」みたいに置きかえないと、もともと全ての整数に色が見えるので干渉して解けなくなる。数学の才能があれば違うのだろうが…