豪華な上演〜METライブビューイング『ロメオとジュリエット』

 METライブビューイングでグノーの『ロメオとジュリエット』を見てきた。指揮者がジャナンドレア・ノセダ、演出がバートレット・シャーである。この演目を見るのは初めてである。

 シェイクスピアの原作の最初をばっさりカットして恋人たちの動きだけにフォーカスし、仮面舞踏会の場面から始めるというもので、話はかなり変えてある。ロミオの両親やジュリエットの母なども出てこないし、バルサザーのかわりにステファノーという小姓が出てくることになっていたり、ジュリエットが夜寝ている間ではなくパリスと結婚させられそうになるところで仮死状態になったり、最後の場面でパリスが死ななかったり、いろいろな変更点がある。とくに話の流れに影響する変更としては、ローラン神父の連絡がロメオに届かないことを説明する場面がないというのがあり、このせいで若干わかりづらくなっているかもしれないと思う。

 セットはイタリアの古い街の一角を模したもので、全てのアクションがここで行われる。見映えのするセットなのだが、教会もジュリエットの寝室もこの街の一角に大道具を運んで演じられるので、たまにちょっとシュールな感じになるのが玉に瑕といったところだ(これならセット自体をもっとシンプルにしたほうがいいかもとも思った)。色味を抑えたちょっと暗いセットで、あまり明るい雰囲気の街ではないという印象を与える。衣装はとてもゴージャスで、けっこうセクシーな感じである。

 最初出てきた時、ジュリエット(ディアナ・ダムラウ)がかなりグラマラスでしかもおっぱいの大きく開いたドレスを着ていたので、これホントにジュリエット?クレオパトラでは?と思ってしまったのだが(演劇でやる時のジュリエットはふつうあまりグラマラスじゃない)、子どもっぽく舞台に走り込んできて歌い始めると一瞬でカワイイ乙女になったのでさらにビックリした。ロメオ(ヴィットーリオ・グリゴーロ)との息もぴったりで、全体的にこの2人のラブシーンには陽性でカラっとしたセクシーさがあり、出会うところなんかはちょっとユーモラスだ。若者がいちゃいちゃふざけあうみたいな面白おかしい恋模様が一気に悲劇に展開し、ドラマティックに恋人たちが死んでいくところまでをとても豊かな感情表現で見せていると思った。

 全体的にとても豪華で丁寧で満足感たっぷりの上演だったと思う。3時間以上もあるが、オススメだと思う。