『終わらないフェミニズム −「働く」女たちの言葉と欲望』

 日本ヴァージニア・ウルフ協会編『終わらないフェミニズム −「働く」女たちの言葉と欲望』(研究社、2016)を読んだ。

 イギリスの現代文学や映画における女性労働表象をフェミニズムの変化という観点から扱った論文集である。ヴァージニア・ウルフから『メイド・イン・ダゲナム』までいろいろな作品が幅広く扱われており、テーマ設定には映画『サフラジェット』などに通じるところもあり、興味深い。ひとつひとつの論文は抜群に面白いし、短いコラムとかもいいのだが(ジャネット・ウィンターソンとサッチャーの話とかはなるほどと思ってしまった)、ただこの論文集タイトルはどうなんだろうと思う。これだと労働史の本を想像するが、日本ヴァージニア・ウルフ協会が出しているだけあって全然労働史の本ではないのでタイトルから想像するものと違いすぎる。一応、序論でシェリル・サンドバーグの『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』の話がでできてなんでこういうことになるか説明があるのだが、私はそもそも『リーン・イン』に対する批判じたいにもちょっと問題もあると思っているので(ロクサーヌ・ゲイが『バッド・フェミニスト』で言っているが、男性がビジネス本を書いても何も言われないのに、なぜ女性がビジネス本を書くと企業で働いていない女性を排除してるとか言われるんだろう?)、あまり説得されなかった。

 あと、細かいところだが、『女になる方法』の著者は「ケイトリン・モラン」(p. 200)じゃなく「キャトリン・モラン」が正しいはずだ。しょっちゅう間違えられるらしくて私も最初は「ケイトリン」と書いてたのだが、本人にツイッターで聞いたら「ネコのキャットと同じ」と言ってた。