絵コンテも大事だけど、図書館サービスも大事だよ!〜『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』

 『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』を見てきた。長きにわたってハリウッド映画を支えてきた絵コンテ作家のハロルドと映画リサーチャー(レファレンスライブラリアン)のリリアンのマイケルソン夫妻の生涯を追ったドキュメンタリー映画である。亡きハロルドの親しい友人だったダニー・デヴィートが製作している。地味な話なのだが、いろいろな映画界の仕事の裏話にマイケルソン夫妻の愛情あふれる生活をからめた、気持ちのいい作品になっている。

 ハロルドは極めて優秀な絵コンテ作家で、『卒業』でロビンソン夫人の足の間からベンが映る有名な場面もハロルドが考えた絵コンテをもとに撮影されたらしい。この映画を見ると絵コンテが撮影上どれくらい重要かがよくわかる。一方でリリアンは映画リサーチャーなのだが、たぶん映画図書館のレファレンスライブラリアンといったほうがわかりやすいと思う。あらゆる映画に関して考証や美術用の調査を行う仕事で、図書室を使った文献調査ばかりではなく、必要とあらば麻薬王にまで取材に行ったらしい。大変面白い仕事だし重要なのだが、ビジュアル的にインパクトのあるハロルドの絵コンテに比べると、リリアンのような地味な仕事はなかなか重要性を表現しにくいな…と思った。ただ、フランシス・フォード・コッポラやドリームワークスの経営陣がリリアンとその図書室を欲しがったという話は、わかってる人たちだなーという感じがした。考証がしっかりしていてこそ、映画のビジュアルにリアルさが生まれる。